​久保田良則公認会計士事務所ブログ

繰延資産と長期前払費用 (会計と税務の違い)


繰延資産には、「会計上の繰延資産」と「税務上の繰延資産」があります。

「税務上の繰延資産」は、「会計上の繰延資産」を含みますが、会計基準上で繰延資産という勘定科目で計上できるのは「会計上の繰延資産」のみであり、「税務上の繰延資産」は「投資その他の資産」に長期前払費用等として計上することになります(中小企業の会計に関する指針)。

会社法上認められている繰延資産は以下の5つに限定されています(実務対応報告第19号「繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い」)。

① 株式交付費

② 社債発行費等(新株予約権の発行に係る費用を含む。)

③ 創立費

④ 開業費

⑤ 開発費

① 株式交付費

株式交付費とは、株式募集のための広告費、金融機関の取扱手数料、証券会社の取扱手数料、目論見書・株券等の印刷費、変更登記の登録免許税、その他株式の交付等のために直接支出した費用をいいます。

原則

支出時に費用処理(営業外費用)

例外

企業規模の拡大のためにする資金調達などの財務活動(組織再編の対価として株式を交付する場合を含む。)に係る株式交付費については、繰延資産に計上することができる。(この場合、3年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法により償却)

なお、株式の分割や株式無償割当てなどに係る費用は、繰延資産にはできない

② 社債発行費等(新株予約権の発行に係る費用を含む。)

社債発行費とは、社債募集のための広告費、金融機関の取扱手数料、証券会社の取扱手数料、目論見書・社債券等の印刷費、社債の登記の登録免許税その他社債発行のため直接支出した費用をいいます。

原則

支出時に費用処理(営業外費用)

例外

社債発行費は、繰延資産に計上することができる。(この場合、社債の償還までの期間にわたり利息法により償却、又は、継続適用を条件として定額法により償却)

新株予約権の発行に係る費用についても、資金調達などの財務活動(組織再編の対価として新株予約権を交付する場合を含む。)に係るものについては、社債発行費と同様に繰延資産として会計処理することができる。(この場合、新株予約権の発行のときから、3年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法により償却)

ただし、新株予約権付社債を一括法により処理するときの発行に係る費用は、社債発行費として処理する。

③ 創立費

創立費とは、会社の負担に帰すべき設立費用、例えば、定款及び諸規則作成のための費用、株式募集その他のための広告費、目論見書・株券等の印刷費、創立事務所の賃借 料、設立事務に使用する使用人の給料、金融機関の取扱手数料、証券会社の取扱手数料、創立総会に関する費用その他会社設立事務に関する必要な費用、発起人が受ける報酬で定款に記載して創立総会の承認を受けた金額並びに設立登記の登録免許税等をいいます。

原則

支出時に費用処理(営業外費用)

例外

繰延資産に計上することができる。(この場合、会社の成立のときから5年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法により償却)

④ 開業費

開業費とは、土地、建物等の賃借料、広告宣伝費、通信交通費、事務用消耗品費、支払利子、使用人の給料、保険料、電気・ガス・水道料等で、会社成立後営業開始時までに支出した開業準備のための費用をいいます。

原則

支出時に費用処理(営業外費用、ただし、販売費及び一般管理費でも可)

例外

繰延資産に計上することができる。(この場合、会社の成立のときから5年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法により償却)

⑤ 開発費

開発費とは、新技術又は新経営組織の採用、資源の開発、市場の開拓等のために支出した費用、生産能率の向上又は生産計画の変更等により、設備の大規模な配置替えを行った場合等の費用(経常費の性格をもつものを除く)をいいます。

原則

支出時に費用処理(販売費及び一般管理費)

例外

繰延資産に計上することができる。(この場合、支出のときから5年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法その他の合理的な方法により規則的に償却)

なお、「研究開発費等に係る会計基準」の対象となる研究開発費(※)については、発生時に費用として処理しなければならない。

(※)「研究開発費等に係る会計基準」の対象となる「研究」「開発」の範囲

(会計制度委員会報告第12号 研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針)

研究・・・「新しい知識の発見を目的とした計 画的な調査及び探究」

開発・・・「新しい製品・サービス・生産方法(以下、 「製品等」という。)についての計画若しくは設計又は既存の製品等を著しく改良するた めの計画若しくは設計として、研究の成果その他の知識を具体化すること」

(研究・開発の典型例)

① 従来にはない製品、サービスに関する発想を導き出すための調査・探究

② 新しい知識の調査・探究の結果を受け、製品化、業務化等を行うための活動

③ 従来の製品に比較して著しい違いを作り出す製造方法の具体化

④ 従来と異なる原材料の使用方法又は部品の製造方法の具体化

⑤ 既存の製品、部品に係る従来と異なる使用方法の具体化

⑥ 工具、治具、金型等について、従来と異なる使用方法の具体化

⑦ 新製品の試作品の設計・製作及び実験 ⑧ 商業生産化するために行うパイロットプラントの設計、建設等の計画 ⑨ 取得した特許を基にして販売可能な製品を製造するための技術的活動

会計上の繰延資産に加えて、次の費用(支出の効果がその支出の日以後一年以上に及ぶもの)等が税法上の繰延資産の対象になります。(ただし、会計上の繰延資産とは認められていないため、「長期前払費用」の科目で計上されます。)

なお、次の費用であっても、支出額が20万円未満である場合は、繰延資産計上せずに全額費用計上することができます。

① 公共的施設(道路、堤防、護岸、工作物など)の設置費用や負担金

・公共的施設のほとんどを自己が利用する場合は、施設の耐用年数の7/10の年数で償却

それ以外の場合は、施設の耐用年数の4/10の年数で償却

②共同的施設(法人が所属する協会、組合、商店街等が設置するもの)の設置費用や負担金

・共同的施設が本来の用途に使われる場合は、施設の耐用年数の7/10の年数で償却。ただし、土地の取得に充てられる部分の負担金については、45年で償却。

・商店街等における共同のアーケード、日よけ、アーチ、すずらん灯等負担者の共同の用に供されるとともに併せて一般公衆の用にも供されるものである場合は、5年で償却(耐用年数が5年未満である場合には、その耐用年数で償却)

③建物を賃借するために支出する権利金、立退料その他の費用

建物の新築に際しその所有者に対して支払った権利金等で当該権利金等の額が当該建物の賃借部分の建設費の大部分に相当し、かつ、実際上その建物の存続期間中賃借できる状況にあると認められるものである場合は、その建物の耐用年数の7/10に相当する年数で償却。

・上記以外の権利金等で、契約、慣習等によってその明渡しに際して借家権として転売できるものである場合は、その建物の賃借後の見積残存耐用年数の7/10に相当する年数で償却。

上記以外は、5年(契約による賃借期間が5年未満である場合において、契約の更新に際して再び権利金等の支払を要することが明らかであるときは、その賃借期間)で償却。

*通常支払う礼金や返還されない敷金・保証金は、税務上の繰延資産に該当し、賃借期間(上限5年)で償却します。(返還される敷金・保証金は差入保証金として資産計上され、償却されません)また、仲介手数料は支払手数料として全額が支払った期の費用となります。

④電子計算機その他の機器の賃借に伴って支出する引取運賃、関税、据付費その他の費用

・その機器の耐用年数の7/10に相当する年数(その年数が契約による賃借期間を超えるときは、その賃借期間)で償却。

⑤ フランチャイズチェーンの加盟一時金や技術指導等のノーハウ設定の頭金

5年(設定契約の有効期間が5年未満である場合において、契約の更新に際して再び一時金又は頭金の支払を要することが明らかであるときは、その有効期間の年数)で償却。

⑥ 販売代理店への広告宣伝用の資産(看板、ネオンサイン、どん帳、陳列棚、自動車のような資産)の贈与又は低額譲渡等

・資産の取得価額又は当該資産の取得価額からその譲渡価額を控除した金額を長期前払費用に計上し、その資産の耐用年数の7/10に相当する年数(その年数が5年を超えるときは、5年)で償却。

⑦出版権の設定の対価として支出した金額

設定契約に定める存続期間(設定契約に存続期間の定めがない場合には、3年)で償却。

⑧スキー場のゲレンデ整備費用(立木の除去、地ならし、沢の埋立て、芝付け等の工事)

・原則、12年で償却。

・既存のゲレンデについて支出する次のような費用の額は、その支出をした日の属する事業年度の損金の額に算入することができる。

(1) おおむねシーズンごとに行う傾斜角度の変更その他これに類する工事のために要する費用

(2) 崩落地の修復、補強等の工事のために要する費用

(3) シーズンごとに行うブッシュの除去、芝の補植その他これらに類する作業のために要する費用

・自己の土地をスキー場として整備するための土工工事(他の者の所有に係る土地を有料のスキー場として整備するための土工工事を含む。)に要する費用の額は、構築物の取得価額に算入する。

⑨同業者団体等の加入金

(譲渡することができる加入金及び出資の性質を有する加入金を除く)同業者団体等の加入金は、5年で償却。

⑩プロスポーツ選手の契約金等

契約期間(契約期間の定めがない場合には、3年)で償却。

・セールスマン、ホステス等の引抜料、仕度金等の額は、支払時に全額費用計上できる。

​プロフィール

久保田良則  (公認会計士・税理士)

 

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​東京23区、埼玉、千葉、神奈川

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